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あいさつ

産科のホームページへようこそ

長良医療センター産科のホームページへようこそ。ここに来てくださった皆さんに、長良医療センター産科とはどんなところなのかをお話ししましょう。

 

ここは産婦人科ではなくて産科なんです。そう、婦人科診療は行っていません。私たちは産科診療だけを行っています。理由はシンプルです。ここには母体胎児専門医が3人います。現在岐阜県内には母体胎児専門医は5人いますが、そのうちの3人がここにいるのです。妊婦さんとおなかのあかちゃんのエキスパートたちが問題を抱えた皆さんをここで待ち構えているんです。長良医療センターは、リスクを抱えてしまったお母さんとあかちゃんのための産科なんです。

 

最近の分娩数は約500件。決して多くはありませんが、このうち90%以上がいわゆるハイリスク症例です。双胎が70例、胎児の形態異常が100例くらいあり、発育が遅れている胎児も同じくらいやってきます。何の問題もなく産まれてくるあかちゃんもいますが、そのほとんどが前回の出産の際にあかちゃんが亡くなってしまったり、お産で大変なめにあったお母さんたちで占められています。もしも里帰り出産もハイリスクだったとしたら、長良医療センター産科の出産はほとんどすべてがハイリスク出産なのです。

 

おなかの中にいるときに何らかの問題がみつかってしまうあかちゃんがいます。こういうあかちゃんの中には産まれる前に治療を行うことができる症例もあるんです。そう、胎児治療です。テレビや新聞などで取り上げられることも多い胎児治療ですが、長良医療センター産科は国内でも数少ない胎児治療の拠点病院となってるんです。たとえば一つの胎盤を共有している双子のあかちゃんは、それぞれの臍帯血管が胎盤の表面でつながっています。多くの場合はうまくバランスがとれた形で産まれてきますが、中にはつながった血管を介して血液の流れが偏ってしまうことがあるんです。双胎間輸血症候群と呼ばれる病態なんですが、このような場合に内視鏡を使って胎盤表面でつながっている血管を見つけて、レーザーでこの問題のある血管を焼き切ってしまう手術を行います。国内では長良医療センターを含めて数カ所でしかこの治療はできません。長良医療センターでは今までに50例程度の経験をしています。この治療を行った場合、少なくともひとりの赤ちゃんが無事に産まれてくる確率は95%もあるんです。

 

胸水、胸に水が貯まっているあかちゃんも見つかります。この水が心臓を圧迫するためにあかちゃんは心不全になってしまい、全身にひどい浮腫がおこってしまいます。この状態で産まれてきても助かる可能性が高いはずもありません。そこで、おなかの中のあかちゃんの胸にチューブを入れて、胸水を羊水中に流していく胸腔羊水腔シャント術という方法があります。この方法がうまくいくと、あかちゃんには心不全がない状態で産まれてきますから、産まれた後の治療がスムーズに行えるんです。その結果、なかなか助けることのできなかったあかちゃんが80%も救命できることになったんです。

 

その他にも血液型不適合やウイルス感染で貧血がひどいあかちゃんに、臍帯血管から胎児に輸血を行うこともできます。また私たちが独自に行っている治療として、極端に羊水が少なくなった発育の悪いあかちゃんに、人工的に羊水を補充する治療も行っています。こういった胎児治療を日常的に行っているのが長良医療センター産科なんです。もちろんこうした技術は長年の経験に基づくものですが、胎児治療をしっかり行うためには正確な胎児診断が欠かせません。超音波やMRIなどの画像診断を、最新の診断装置を駆使しながら行っています。外来では長良医療センターで出産しない方を対象にした胎児異常をスクリーニングする胎児ドックもおこなっています。

 

 

私たちの診療のもう一つの大きな特徴は、入院患者さんの主治医を決めないということです。全員が主治医になるんです。毎日のカンファレンスですべての患者さんの状態を把握して、誰が当直であっても同じ対応ができるようにしています。病棟には看護スタッフも大勢いますが、医師も助産師も看護師もすべてが一人の医療者として入院患者さんに向き合いたいと考えています。私たちの目指す病院は理想の病院ではありません。本来あるべき病院の姿を探し続けています。その病院とは、残念ながら亡くなってしまったあかちゃんを抱いたお母さんが、心穏やかにほほえみを浮かべて「ここで産んでよかった」と言ってもらえる病院なんです。

 

胎児病の診療統計

当院開設の2005.3.1から2011.11.30現在の81ヶ月間に当院で入院管理させていただいたなかで、特に「胎児疾患」の内訳をまとめてあります。
まさに、数々のあかちゃんとおかあさん、そして我々が一緒に歩んできた歴史です。
当科では、分娩管理までを行う“フォワード”の役目だけではなく、正確な診断を行うことで適切な分娩場所の紹介も行う“ミッドフィールダー”の役目も担っています。そのため、当科で診断、治療だけおこない、出産は地元で行っていただいた方々も日本中に大勢おられます。

 
疾患グループ 総数 2229(重複なし) 
双胎 549
FGR(胎児発育不全) 408
羊水量異常 135
妊娠糖尿病(GDM) 115
胎児心臓異常(心臓のみ) 109
胎内死亡/流産 88
血液型不適合妊娠 87
脳神経系 86
腎/泌尿器 80
腔水症(胎児水腫) 71
胎児機能不全/心拍モニター異常 65
染色体異常 65
リンパ管異常 48
胎児感染症 43
臍帯異常(巻絡を含む) 42
胎児腫瘍 39
骨系統疾患 33
肺、胸郭 27
多発奇形(染色体異常は除く) 22
巨大児(GDM以外) 22
口唇口蓋裂など 20
腹壁(単独) 13
消化管(食道、腸)(単独) 10
胎盤腫瘍 3

2005年3月から2011年12月までの臨床統計

年次 総分娩 経膣 帝王切開 緊急CS 早産数 双胎 総出産児 死産<22週 死産>22週 母体搬送
2005 204 111 93   58 17 221 21 11 103
2006 400 232 168 65 101 60 460 30 18 131
2007 472 274 198 78 94 50 522 33 13 124
2008 416 225 191 65 68 60 476 23 15 69
2009 459 233 226 97 92 59 518 32 12 104
2010 471 240 231 83 127 71 542 39 5 119
2011 495 263 232 87 128 64 559 30 10 119

2005年3月開設のため10ヶ月間
22週未満の死産は分娩数に含まず
早産数は37週未満の分娩

診断

妊娠初期の胎児スクリーニング

妊娠初期というのは、おもに妊娠10-14週のころのことです。近年、世界的な流れとして、より早い時期での胎児異常の発見に力を注ぐようになってきております。当科の場合には、当院での出産を考えておられる方はもとより、そうでない方でも、この時期のスクリーニングをご希望された場合には、まず超音波検査で詳細な観察をおこなっております。
週数が早いため、細かいすべての所見の評価は難しいですが、この時期にしか確認できない所見もあります。

 

たとえば双胎かどうか、双胎ならば、その膜性診断はどうか、というのはこの時期にしか分からないとても大切な情報です。頭部の形成(無頭蓋症や無脳症)、脳の構造、脊椎、手足の数はどうか。心拍数の異常はないかどうか。又体の中に腫瘍のようなものがないか、など、様々な所見が確認されます。とくに条件がよい妊婦さんですと、これらの所見がよく確認できます。

 

また最近よく耳にするかもしれませんが、項頸部浮腫の有無(NT; nuchal translucency,)などもご希望に応じて確認します。この所見は、正常な胎児でも認められますが、診断が簡単ではないので、よく誤解のもとになることがあり、当科でも慎重に観察を行います。また、インターネットなどでの断片的な知識により、不安が強くなる妊婦さんも大勢おられます。

 

他には、胎児鼻骨、静脈管、心臓三尖弁逆流の有無など、NTとセットで観察する項目もあります。これらの所見がそろいますと、胎児の異常などの可能性が高まるといわれておりますので、ご希望があれば詳細な検査(他項目;胎児ドック、羊水検査など参照)へと進むことになります。

 

この時期の検査では、すべてが分かるわけではないことから我々は誤った理解で、誤った判断をされることを心配しております。何らかの不安な点がある方はお気軽に外来にお越しいただき、ご相談を申し受けます。系統だったお話を聞いていただき、誤った情報に惑わされないように、お手伝いさせていただきます。

 

妊娠11週 胎児鼻骨、NT、静脈管の観察

外来での胎児ドック

あかちゃんのさまざまな問題点は、超音波画像診断の進歩により出生前に明らかにされることが増えてきています。現在、当院は、東海地方を中心とする、胎児疾患の診断、治療などの管理を専門的に行っています。そのため、ほぼすべての胎児疾患に対応すべく、日々診療にあたっています。必然的に、早い時期からの超音波診断にも力を入れています。

 

具体的には,妊娠20週前後、妊娠30週前後に、胎児の大きな問題がないか、流早産や、妊娠継続に大きな問題がないかなど、通常の健診よりも時間をかける専門的な「胎児ドック」を行います。主に、20週前後では、胎児の生命に関わる大きな構造異常がないかを中心に、30週前後では出産に向けて大きな問題がないか、胎児発育や後半に発症する心機能異常、胎盤循環異常などにも焦点をあてて確認致します。胎児疾患関に関しては、別項 胎児病 診療統計通常の胎児スクリーニングと出生前診断を参照していただきたいと思いますが、羊水量、脳神経、顔面、骨疾患、心臓、肺、腎臓、腸など多岐にわたって観察を行います。また、臍帯、胎盤位置,必要に応じて子宮頸管長(早産のリスク評価)なども評価しています。つまりは、安心して出産できるかどうか、あかちゃんの命に関わる問題がないかなど、総合的な周産期評価をおこない、あかちゃんに関する不安にお答えできるようにわかりやすく説明させていただいております。

 

 

万一、何らかの問題点が指摘された場合には、さらに詳細な検査を行います。その上で、小児科、小児外科など、出生後の管理を行う診療科と検討し、最善の策を考えていきます。

 

 

ご希望の場合には、かかりつけの産婦人科で紹介状を書いていただくか、そうでない場合でも、初診で受診していただくことが可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
人間ドックと同様に、残念ながら健康保険を使うことは出来ません。
初回の料金は8,640円、二回目は4,320円です。

 

ご希望の方は長良医療センター産科受付までお問合せください。

羊水検査とその意義

羊水検査は、一般的には胎児の染色体を調べるために行われます。まれに先天代謝異常の診断にも用いられますが、これは対象となる疾患がわかっている特殊な場合に限られます。したがって妊娠中期の羊水検査といえば、普通は胎児の染色体を調べる検査ということになります。仮に染色体が正常であったとしても、あかちゃんにまったく異常がないということにはなりません。産まれた後にいろいろな治療を必要とするあかちゃんのほとんどは、染色体は正常なのです。

 

私たちは胎児に直接手術を行っています。胎児に直接針を入れることに比べれば、羊水を採取することはたしかにシンプルな作業ということができるでしょう。しかし、子宮に針を刺すのですから。それなりの危険を伴います。破水をしてしまう可能性もありますし、子宮の中を元気に動き回る胎児が針に向かって突進してくる可能性もあります。これは意外に知られていないのですが、ウイルス感染があった場合、針を刺すことによって母子感染を助長する危険性が否定できません。やはり検査の必要性をよく考えて、施行するかどうかを慎重に考えなければいけません。

 

長良医療センター産科では、胎児の染色体検査以外にも羊水を用いた検査を行っています。子宮内に細菌感染が起こっている可能性が考えられる場合には、羊水中に細菌がいるかいないかを確認したり、羊水中のさまざまな物質を調べたりすることで感染の有無を確認しています。子宮内に感染がおこっている状態で妊娠期間を延長すると、産まれたあかちゃんには大きな問題となるからです。

 

早産したあかちゃんにとって最も大きな問題は、自力で呼吸ができるかどうかです。人工呼吸器もどんどん改良されていますが、やはり自力で息ができるかどうかは重要な鍵になります。早産しそうな赤ちゃんが自分で呼吸できる状態かどうか、羊水を使って調べることができるのです。こういう情報は産まれたあとの早産未熟児の管理に大変役にたつことは言うまでもありません。

 

たかが羊水と思われるかもしれませんが、やはり子宮の中に針が入る検査です。検査を行う理由をはっきりとさせて、危険性をよく理解した上で羊水検査を受けていただきたいと思います。

通常の胎児スクリーニングと出生前診断

当科の特徴の1つとして、出生前診断に力を入れていることが上げられます。出生前診断といってもいろいろな方法があるのですが、特に超音波やMRIを使用した胎児スクリーニング、出生前診断に力を入れています。当科での妊婦健診ではすべての方に対して、妊娠経過を通してあかちゃんの全身のスクリーニングを行い、そこで異常が疑われた場合には、複数の周産期専門医による精密検査を行い胎児診断を進めて行きます。

 

ところでなぜ胎児スクリーニングや出生前診断が必要なのでしょうか?私たちが病気になるのと同じように、あかちゃんもお母さんのおなかの中で病気になってしまうことがあります。病気によってはおなかの中で状態がどんどん悪くなってしまう事もあります。そんなあかちゃんの病気を出生前診断することができれば、胎児治療を行うことやあかちゃんが危険な状態になる前に出産して胎外治療に切り替えることができます。以前は出生前診断されないことによって、たくさんのあかちゃんがおなかの中で亡くなってしまっていたのです。また出生前診断が直接胎児治療につながらなくても、あかちゃん一番いい状態で生まれてもらうための準備をすることができます。たとえばあかちゃんに外科的な病気がある場合や先天性心疾患がある場合、生まれた直後から専門の先生に見てもらうことができるように出産場所を検討したり、出生前の状態を参考にした準備をしておくことができます。特に先天性心疾患の場合、以前は出生前診断されず通常に出産され、しばらくたって状態が悪くなってから初めて専門の病院にたどり着くケースが多くありました。ただでさえ集中管理が必要なあかちゃんなのに、すごく状態が悪くなってし?っていて治療がとても難しくなってしまっていた場合もありました。出生前診断されていたら助かった命、避けられた合併症がたくさんあったのです。

 

 

当科での胎児スクリーニング、胎児診断はBモード超音波検査による形態異常の検索に始まり、様々な胎児疾患の診断、パルスドップラー法を用いた胎児心機能の評価や胎児貧血の診断など、様々な胎児や胎盤の機能評価も行っております。 たとえば、ひとつの胎盤を共有している双子ちゃんの場合、二人の間の血液のバランスが崩れてしまいとても危険な状態になってしまうことがあります。そんなとき大切なのはバランスが崩れたサインをいち早く見つけて、あかちゃんたちの負担がどれぐらいあるかを評価することです。

 

 

そしてどんな胎児治療があかちゃんたちに必要なのか、どのタイミングであかちゃんを産んであげたらいいのか等を判断していくのです。

 

あかちゃんたちはおなかの中で生きているのです。
私たちには立派な患者さんなのです。
そんな患者さんの最大の利益のために胎児スクリーニング、出生前診断は無くてはならないのです。

胎児3D 4D超音波検査

当科では最新鋭の超音波機器による3D、4D超音波検査に対応しています。
条件にもよりますが、各妊娠週数毎のかわいいあかちゃんの姿がご覧にいただけます。妊娠12-15週頃にはあかちゃんが元気に動く全体像が、妊娠20週頃からはお顔や手などあかちゃんのいろいろなパーツがはっきりし始めます。通常の超音波画像ではなかなかイメージがつかみにくいあかちゃんの姿も、3D画像によってよりいっそうかわいらしく確認することができます。一緒に来られた旦那さまも、そんなあかちゃんの姿を見たら、きっともっとあかちゃんを身近な存在に感じられるのではないでしょうか?

 

でもあかちゃんは、時にとても恥ずかしがり屋さんなのでお顔を見せてくれないときもあります。そんなときは次のチャンスを待ちましょう。

 

3D超音波検査の役目はあかちゃんのかわいい姿を見るだけではありません。当科では3D超音波画像を胎児診断にも活用しています。様々な胎児の形態異常は、通常の超音波検査による断層写真では全体像を把握することが困難な場合があります。そのような場合3D超音波検査による画像構築により、表層の形態を把握することが可能となり、正確な診断のための重要な情報となります。また3D超音波による様々な組織や臓器の大きさを、正確にかつ再現性を持って計測することが可能です。様々な場所に嚢胞(水の入った袋状の固まり)や腫瘍を持っているあかちゃんもいるのです。そんな場合、嚢胞や腫瘍が大きくなってこないか経時的に観察することで、あかちゃんの病状をより正確に把握することができます。また当科では膀胱の大きさを経時的に計測することにより、あかちゃんの排尿機能や尿産生量を推測する新しい試みを行っており、今後様々な胎児の病態解明に役立てていきたいと考えております。

 

胎児MRI検査

磁気共鳴画像(MRI)は磁気を用いて画像を構築する診断装置です。放射線を用いずに鮮明な画像が得られるために、妊婦や胎児に対しても施行が可能な検査法です。

 

胎児を対象とした画像診断法としては超音波画像診断が一般的です。最近は立体的な胎児画像が見える3Dとか4Dといわれる超音波画像もあたりまえになってきました。産科診療の聴診器とまでいわれるようになった超音波検査も、残念ながら万能ではありません。胎児の位置や母体の皮下脂肪などのために、十分な情報が得られないこともしばしば経験されます。このようなときに、超音波とは異なる角度からの胎児情報をもたらしてくれるのがMRIなのです。

 

胎児の形態異常を評価するときに、MRIは臓器によって信号強度、つまり白く見えるか黒く見えるかがはっきりと異なります。したがって、臓器の問題を超音波画像とは明らかに違う形で表してくれるのです。超音波ではわからない問題点がMRIを撮像することによって、はじめて明らかになることもあるのです。

 

胎児の問題だけではなく、妊娠に合併した子宮や卵巣、その他の腫瘍の評価を行うことももちろん可能です。CTのような放射線被曝がありませんから、超音波ではうまく診断できない場合には大いに役に立つ検査法です。

 

最近、私たちはMRIを用いて産まれる直前の臍帯の長さや位置を正確に評価する方法を開発しました。分娩中の予想できない非常事態のほとんどは臍帯に関連する問題によって発生します。臍帯は妊娠初期には超音波でも観察できますが、分娩が間近になった時期には超音波の画面からはみ出してしまうので評価は不可能です。

 

このようにMRIは超音波の弱点を補って、より正確な診断を可能にする画像診断法なのです。種子の発芽実験やさまざまな動物実験でもMRIの胎児への安全性は確認されてきています。あかちゃんに最適な治療を行うために必要な検査ですから、安心して検査を受けてください。

 

 

 

予防と管理

初期のリスク評価と早産予防の試み

当科は周産期センターとして、妊娠早期の前期破水や、切迫早産の為に救急車で搬送されてくる患者さんが後を絶ちません。そのような方々のあかちゃんは、極早い時期ですと救命は難しいことが多く、また、救命できても後遺症が残る危険性が非常に高い状態です。破水や陣痛が来てしまった症例は残念ながら、妊娠期間の延長をはかることができないことが多く、そのまま死産や早産になってしまいます。そんな悲しい症例を多く経験する中で我々が達した結論は手遅れになる前に妊娠初期における早産のリスクの評価をおこない、リスクの高い方には、何らかの予防治療を行えないか、ということでした。原因が複雑に絡み合った病態で、世界的にも確立した予防治療が存在しないのが現状でしたので、我々独自の方法を研究することにしました。

 

妊娠初期に膣細菌培養、子宮頸管白血球検査、過去の流早産の既往、現在の出血や、腹痛、絨毛膜下血腫の有無、双胎かどうかという5項目を評価し、2項目以上満たす場合には流早産のハイリスクと考えて、約二週間の入院による早産予防治療を開始しています。試験的に開始したものですが、使用する薬剤などは既に妊婦さんに広く使われているものばかりで、それらを組み合わせて総合的なメニューを作りました。入院中は、毎日頸管長を測定し、既に短くなっている方には、必要に応じて頸管縫縮術を行い、いざという時の保険を増やします。結局破水したり、陣痛がきたり、出血を認めるという「大きな火事」になる前に、小さな煙の段階でその芽を摘み取ろうという予防医学的な考え方です。この、考え方に賛同された患者さんは既に200人をこえ、かなりよい早産予防効果が上がっていると考えています。まだ一般診療ではありませんがこの考えかたを大切にして、一人でも多くのあかちゃんの後遺症のない生存を目指していきたいと考えております。

 

この考え方をもとに岐阜大学産婦人科と連携し、岐阜県全体の周産期施設による早産研究グループである「岐阜県早産研究会」を立ち上げ、2011年より岐阜県全体での研究を開始しております。

 

胎児発育不全(FGR/かつてのIUGR)とは

胎児が標準と比べて、かなり小さい状態をいいます。超音波検査で推定体重を計算して診断します。 精密検査を行う必要があったり、よりきめの細かい観察のため入院が必要となったりします。分娩のときも注意深い管理が必要になりますし、生後も短期、長期的にしっかりとしたケアが必要となります。大まかに①胎盤機能不全型、②胎児原因型に分けられます。

 

①胎盤機能不全:胎盤の働きが悪かったり、臍の緒の血液の流れが悪いなど、おなかのなかの環境がよくないことによって起こります。少ない栄養、酸素でやりくりしなければいけないので、大切な場所である頭の発育は保たれていますが、体の部分、特におなかまわりの発育が遅れている状態(やせ)です。妊娠高血圧症候群・膠原病などに伴う胎盤機能の異常や臍の緒の捻れ過ぎなどが原因で発生し、羊水が少なくなるケースが多いです。

 

②胎児原因型:染色体異常や初期の感染症など、あかちゃん自身に原因があって、十分に栄養があっても大きくなれないケースです。超音波上、頭部、腹部、大腿のすべての部分が小さめとなることが多い型で、中には羊水が多くなることもあります。

 

 

 

<妊娠中のリスク>

胎盤の働きが悪い場合、もともと血液の巡りがよくないので、おなかの張りに伴い酸素が足りなくなる危険性があります。また羊水が少ない場合は、臍の緒が子宮と赤ちゃんの間に挟まりやすく、おなかの張りやあかちゃんの動きに伴って臍の緒が圧迫されて、血液の巡りが悪くなるため、酸素不足になる危険性があります。

 

<対策>

安静臥床や子宮収縮抑制剤投与(内服や点滴)を行うことにより、子宮への血流がよくなることが期待できます。また羊水が減ってきて臍帯圧迫を生じる場合には、当科では人工羊水注入療法を行うことがあります。これらの治療によっても改善しない場合、または新生児管理を安全に行える週数であった場合は、子宮外での治療の方があかちゃんにとって安全であるため、分娩を検討します。分娩の方法については、その時点でのあかちゃんの心拍の状態や超音波検査により経膣分娩か帝王切開か判断をします。なお経膣分娩を行う場合も、帝王切開がすぐにできる準備をした上で注意深く胎児心拍を観察します。あかちゃんにとって経膣分娩が危険と判断された場合は速やかに帝王切開に切り替えます。

胎児心臓病

先天性心疾患は約100人に一人のあかちゃんが持っているといわれ、胎児の形態異常の中では最も頻度の高いものとされています。しかも先天性心疾患の中には、出産直後からの治療を開始しないとあかちゃんの命にかかわってしまう重篤なものもあるのです。また先天性心疾患がきっかけとなって、他の様々な胎児異常が見つかることもあります。こうした理由で胎児の先天性心疾患の診断は、出生前診断の中でも最も重要なもののひとつなのです。しかし心臓は非常に複雑な臓器なので、胎児の先天性心疾患は出生前診断が非常に難しく、診断率が施設や地域によって大きく異なることが問題となっています。

 

当科は岐阜県で初めて、先進医療としての「胎児心臓超音波検査」が可能な施設としての認定を受けており、周産期専門医をはじめ、常に胎児の心臓スクリーニングを行っている経験豊富なスタッフにより胎児の心臓超音波検査を行っております。周囲の産科施設の協力もあり、当科での胎児先天性心疾患の診断率は約90%と、日本のトップクラスの診断率を誇っております。また先天性心疾患が診断された場合は、小児循環器科や新生児科の先生と連携の上綿密な治療計画をたて、あかちゃんが最良の条件で治療のスタートを切れるようにサポートを行っております。あかちゃんの先天性心疾患が見つかってしまうことは非常にショックな出来事ですが、生まれる前に見つかることで、一番いい治療法を準備することができるのです。それこそがあかちゃんの持つ可能性を最大限に生かしてあげられるチャンスなのです。可能性を信じてあげれば、あかちゃんもきっと頑張ってくれるはずです。あかちゃんの持つポテンシャルを最大限に発揮してもらうため、今日も我々はあかちゃんの病気に目を光らせています。

 

 

 

胎児治療

双胎児間輸血症候群と胎児鏡手術 (FLP)

一絨毛膜(胎盤)双胎に起きる双胎児間輸血症候群は、早期に発症すると救命が非常に難しい疾患です。かつては、かりに救命できても脳障害や、失明などの後遺症を持つことが多かった疾患でした。しかし近年、世界中そして日本でも胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(fetoscopic laser photocoagulation for TTTS; FLP )が有効な治療法として認められ、児の救命率が上昇してきております。本邦では先進医療に認定された施設が現在5施設存在しており、当科はその1施設として、この地域を中心とした本疾患に対して、同手術を行っております。今までには岐阜を始め、愛知、三重、富山、滋賀、京都、大阪、兵庫、静岡などの地域の患者さんに同手術を行って参りました。現在までのところ、少なくとも一児以上の生存を得たご夫婦の割合は96%(2012年5月現在)という成績となっており、世界的にも遜色ない成績を残しています。常日頃よりチーム全員が、一絨毛膜(胎盤)双胎の全胎盤の観察を行い、胎盤表面の吻合血管を同定するトレーニングを欠かしません。またかなり詳細な術前、術後の母児の観察を行っていることもその一因と言えるかも知れません。しかし、すべてのあかちゃんを救える訳ではないことも事実ですので、我々の探求は現在も進行形です。少しでも手術成績が良くなるような日々の努力とトレーニングを続けています。この治療は2012年4月より健康保険で行えるまでになりました。このような日本全体での取り組みで、多くのあかちゃんの後遺症のない生存を目指していきたいと考えています。

 

胎児胸水に対する胸腔-羊水腔シャント術

胎児胸水は、胎児の肺の外側に大量にリンパ液がたまり、肺が小さくなって、更には心臓の機能まで低下する疾患です。やがて全身の浮腫が進行していきますので、そのまま放置しますと、新生児期の救命が難しい症例が多い疾患です。我々はこのようなあかちゃんに対して、胎児の胸腔と羊水腔にチューブを留置する、胎児治療(胸腔-羊水腔シャント術、TAS)を行っています。当科に入院されますと、まずは一度胎児の胸水を細い針で穿刺、吸引します。その後に、再度急激に貯まってくる症例に対して、シャント留置術を行います。そうしますと胸水が持続的に羊水腔のほうに流れていきますので肺が膨らみ、心臓の機能が改善します。少しでも妊娠期間をいい状況で延長できるようになるのです。この治療はすべてのあかちゃんに行えるわけではありません。なかには、生まれつき肺が硬いあかちゃんや、来院された時点で状態が悪化しすぎている場合も経験しています。しかし、治療がうまくいって救命できたあかちゃんも多く存在しています。
(詳細はこちらも参考にしてください。http://www.jsog.or.jp/PDF/60/6009-278.pdf


当科は日本胎児治療学会の事務局があり、厚生労働省の成育医療研究センターを中心とした胎児治療の研究班として、シャント術の研究にも参加してまいりました。また、胎児治療としてはレーザー治療に次いで二件目ですが、2012年7月より、健康保険で行えるようになりました。

 

この治療法が多くのあかちゃんを救うのに役に立てるように、今後とも研究を重ねて行かなければならないと考えています。

 

胎児貧血と胎児輸血

おなかの中のあかちゃんも、さまざまな原因によって貧血になることがあります。大人の場合、血液検査によって貧血があるかどうか調べますが、おなかのなかのあかちゃんも基本的には同じ血液検査で調べます。超音波で確認しながら、お母さんのおなかを通して針を刺し、臍帯から血液をとります。これは簡単なことではありません。そのため最近では、治療を必要とする貧血があるかどうかを、超音波検査で推測する方法が知られています。あかちゃんの頭の中大脳動脈という部分の血流速度を測る方法です。超音波検査で胎児貧血が疑われた場合、臍帯穿刺を行い、臍帯血の採血をして確認します。

 

<原因>

血液型不適合:母体Rh(-)で胎児がRh(+)の場合、またその他の不規則抗体をもっている場合、胎児貧血を起こすことがあります。そのため妊娠初期に母体の血液型を調べ、そのリスクが高い血液型であれば、胎児貧血を起こしていないか、注意してみていきます。
母児間輸血:非常に稀なことですが、児の血液が母体血液内へある程度の量流入し、児の血液に対する抗体を作ってしまうことがあります。母体血液内に胎児の赤血球成分(HbF)がたくさん検出されるかどうかで、診断します。
胎児水腫(パルボウイルス感染):妊娠中にリンゴ病の原因であるパルボウイルスに感染すると、中には胎児感染を起こし、胎児貧血となりむくみを起こす場合があります。母体血液検査で、最近初めての感染があったかどうかを調べます。
双胎間輸血症候群:レーザー手術後も、胎児貧血を起こす場合があり、慎重な経過観察が必要となります。
無心体双胎:正常児から無心体児へ血液が流れるため、正常の児に貧血を起こすことがあります。

 

<治療>

超音波で臍帯静脈の位置を確認しながら、採血に使う細い針を用いて、臍帯静脈を穿刺し、輸血を行います。貧血の原因によっては、何度か輸血を繰り返すこともあります。
上記のリスクがあっても、ほとんどの場合は輸血を必要とする様な胎児貧血とはなりません。しかし慎重に経過をみていないと貧血のサインを見逃すこととなり、治療のタイミングを逃してしまいます。そうなると、胎児の脳障害や、胎児死亡を起こすこともあります。まずは、胎児貧血を起こすリスクがあるかどうかの判断が重要となります。

 

羊水過少症に対する羊水注入療法

羊水とは子宮内で胎児のまわりにあるお水で、ほとんどが胎児の尿からできています。
実際に羊水量を測定することは非常に難しいので、簡単な計測法として超音波検査による測定方法が知られています。妊娠後期では、子宮の4か所で羊水の深さを測定し、それを合計したAFI(Amniotic Fluid Index)という値です。妊娠週数によっても変動はありますが、おおよその目安として8cm未満は羊水過少、25cm以上は羊水過多とされています。また双胎や妊娠早期の場合は全体の量だけでは判断できないので、個々の胎児のまわりの最大の1スペースに羊水の深さがどれくらいあるのかを測定します。2cm未満を羊水過少、8cm以上を羊水過多と考えます。


<羊水過少症の原因>

破水したり、胎児の尿が少なくなったりすると、羊水過少症となります。羊水過少が発見された場合、まず破水がないか確認します。水っぽい帯下を自覚できることがほとんどですが、中には気づかないうちに破水していることもあり、診察時に羊水の流出がないか見て判断します。破水は母児の感染リスクになり、また時期によってはあかちゃんの救命が難しくなることもあるため、早期発見はとても重要なことです。
胎児の尿が少なくなる原因として、胎児の腎機能不全や尿路閉塞もあります。早い時期に羊水過少が進行してくるものには、重症で救命が困難な病気もあり、まずは超音波検査での診断が大事です。しかし羊水が全くない状態では超音波検査で正確な診断をするのが難しくなるので、場合によっては羊水注入を行い観察しやすくすることもあります。妊娠中期に羊水が減少してくる場合、胎児発育遅延などにより、胎盤機能の低下が関係していることがあります。超音波検査で胎児の血流を細かく観察することにより、その重症度を判断することができます。


<人工羊水注入療法>

羊水は胎児の周りでクッションの役割をはたしており、臍帯の圧迫などを防いでくれています。そのため、羊水が減ってくると臍帯が圧迫を受けやすくなり、胎児の低酸素状態を引き起こすことがあります。胎児心拍モニターを装着することにより、心拍の変動をみて判断できます。重症の場合には胎児死亡の危険もあるため、早く分娩し外で治療してあげる必要が出てきます。しかし早産によるリスクが考えられる非常に早い週数では、少しでも妊娠期間を延長するため、当院では子宮収縮抑制剤の点滴や、羊水注入などの治療を行っています。羊水注入とは、超音波で子宮内の様子をみながらおなかに針を刺し、温めた生理食塩水を子宮内に足していく方法です。この方法により、臍帯圧迫を和らげることが期待できます。また、分娩時に羊水過少があると、陣痛に伴い臍帯圧迫を生じやすくなります。基本的にはこのようなとき帝王切開が必要となりますが、状況によっては経膣式に羊水注入を行い、帝王切開を回避できる場合もあります。(これは既に保険診療となっています。)


羊水過少症に対する羊水注入療法

羊水とは子宮内で胎児のまわりにあるお水で、ほとんどが胎児の尿からできています。
実際に羊水量を測定することは非常に難しいので、簡単な計測法として超音波検査による測定方法が知られています。妊娠後期では、子宮の4か所で羊水の深さを測定し、それを合計したAFI(Amniotic Fluid Index)という値です。妊娠週数によっても変動はありますが、おおよその目安として8cm未満は羊水過少、25cm以上は羊水過多とされています。また双胎や妊娠早期の場合は全体の量だけでは判断できないので、個々の胎児のまわりの最大の1スペースに羊水の深さがどれくらいあるのかを測定します。2cm未満を羊水過少、8cm以上を羊水過多と考えます。

 

<羊水過少症の原因>

破水したり、胎児の尿が少なくなったりすると、羊水過少症となります。羊水過少が発見された場合、まず破水がないか確認します。水っぽい帯下を自覚できることがほとんどですが、中には気づかないうちに破水していることもあり、診察時に羊水の流出がないか見て判断します。破水は母児の感染リスクになり、また時期によってはあかちゃんの救命が難しくなることもあるため、早期発見はとても重要なことです。
胎児の尿が少なくなる原因として、胎児の腎機能不全や尿路閉塞もあります。早い時期に羊水過少が進行してくるものには、重症で救命が困難な病気もあり、まずは超音波検査での診断が大事です。しかし羊水が全くない状態では超音波検査で正確な診断をするのが難しくなるので、場合によっては羊水注入を行い観察しやすくすることもあります。妊娠中期に羊水が減少してくる場合、胎児発育遅延などにより、胎盤機能の低下が関係していることがあります。超音波検査で胎児の血流を細かく観察することにより、その重症度を判断することができます。

 

<人工羊水注入療法>

羊水は胎児の周りでクッションの役割をはたしており、臍帯の圧迫などを防いでくれています。そのため、羊水が減ってくると臍帯が圧迫を受けやすくなり、胎児の低酸素状態を引き起こすことがあります。胎児心拍モニターを装着することにより、心拍の変動をみて判断できます。重症の場合には胎児死亡の危険もあるため、早く分娩し外で治療してあげる必要が出てきます。しかし早産によるリスクが考えられる非常に早い週数では、少しでも妊娠期間を延長するため、当院では子宮収縮抑制剤の点滴や、羊水注入などの治療を行っています。羊水注入とは、超音波で子宮内の様子をみながらおなかに針を刺し、温めた生理食塩水を子宮内に足していく方法です。この方法により、臍帯圧迫を和らげることが期待できます。また、分娩時に羊水過少があると、陣痛に伴い臍帯圧迫を生じやすくなります。基本的にはこのようなとき帝王切開が必要となりますが、状況によっては経膣式に羊水注入を行い、帝王切開を回避できる場合もあります。(これは既に保険診療となっています。)

 

羊水過多症に対する羊水除去術

<羊水過多症の原因>

胎児の排尿が多いか、嚥下が上手でないと羊水過多症になります。原因には様々なものが知られていますが、実際には6割程度は原因不明といわれています。残りの4割のうち、大きく分けて母体側の原因、胎児側の原因に分けられます。母体側の原因としてよく知られているのが、母体の高血糖です。そのため羊水過多症があると、糖尿病が隠れていないか検査していくことがあります。胎児側の原因としては様々なものがあります。胎児の尿が増える原因として、双胎間輸血症候群があります。これは一絨毛膜性双胎で、一児の羊水過多と一児の羊水過少がみられることで診断されます。嚥下が上手くできない原因としてまず考えられるのが、消化管(食道や腸)閉鎖です。そのため、超音波検査で消化管の見え方に異常がないか、細かく観察していきます。しかし場合によっては超音波検査だけでは発見できないものもあり、生後消化管の通り具合を検査することもあります。消化管の閉鎖があれば、生後あかちゃんの手術を行い治療します。またその他の原因として、胎児の染色体異常などにより嚥下が上手にできないことも考えられます。その場合、羊水過多以外に胎児の心臓異常や手足の見え方など、その他の特徴ある所見が知られているため、超音波検査で細かい観察をしていきます。

 

<羊水除去術>

原因が何かということに関係なく、羊水過多が重症となってくると、おなかが通常以上に大きくなるため、おなかが張りやすく切迫早産となることがほとんどです。また胃の圧迫により食欲がなくなったり、睡眠がとりにくくなったりします。こういった症状が強い場合には、局所麻酔を行って点滴用の穿刺針を用いて子宮穿刺をおこない、羊水を除去して症状を緩和していきます。これらの精密検査や治療のため、羊水過多が重症の場合には入院が必要となります。

母児安全

安全な分娩の為の新しい分娩前リスク評価~臍帯の問題~

 

分娩時、胎児の状態が悪くなる原因には臍帯因子が関わることがしばしばあります。臍帯とは胎盤と胎児の臍とをつなぐ血管で、母体から胎児へ酸素、栄養を送る交通路です。俗にいう「へその緒」はこの臍帯の切れ端です。
この臍帯の異常によって分娩時に胎児の心拍数が下がり、緊急で娩出しないといけなくなり、母児ともに危険な状況になることがあります。
具体的な臍帯因子のエコー所見を提示します。

 

 


当院では妊婦健診時に事前にこれらを評価します。これらの所見があるからといって、必ずしも分娩が危険になる訳ではありません。しかしこれらの情報を事前に知っておくことで、陣痛がきた場合に早めの入院をするなど対策をとれますし、緊急時の対応も迅速に行うことができ、あかちゃんの安全な娩出に少しでも貢献できるものと考えています。

胎児急変時の緊急帝王切開術

当科ではハイリスクのお産を取り扱っているという施設の特性上、分娩の急変時の迅速な対応に力をいれております。どんなお産でもあかちゃんの状態が急変する可能性はあるのですが、発育遅延のあかちゃんや双胎妊娠の分娩の際は特に、いつあかちゃんが苦しい状況になってもおかしくありません。ハイリスク分娩の際、安全策をとって最初から帝王切開を選ぶという選択もありますが、お母さんが経腟分娩を希望される場合、私たちはできるだけその希望に沿いたいと思います。そのためは分娩中のあかちゃんの状態をしっかりと把握して、あかちゃんが経腟分娩のストレスに耐えられないと判断した場合は速やかに帝王切開に切り替え、元気に生まれてくれる手助けをいたします。時にはあかちゃんの状態が急激に悪化することもあり、そのときは一刻を争う超緊急帝王切開が必要となることもあります。

 

緊急帝王切開が必要となった場合、一般的に方針決定から30分以内にあかちゃんを娩出してあげる事が望ましいとされておりますが、実際にそれを24時間実現することは簡単なことではありません。私たちは緊急時に可能な限り速やかにかつ安全に帝王切開が施行できるよう努力をしております。当科では分娩室でそのまま手術ができる設備を備えており、緊急時は分娩室がそのまま手術室として使用可能です。また定期的に訓練を行い医師、助産師、看護師が緊急時にどう対応するのかをシミュレーションしております。

 
またとても重要な事は、分娩前に徹底的にリスク評価を行い、起こりえるトラブルを予測することです。発育遅延のあかちゃんでは、発育や羊水の量、あかちゃんの様々な箇所の血流や心拍パターンの評価などを細かくチェックし、あかちゃんが分娩時にどのような反応を示すのか予測を立てます。ハイリスク分娩はもちろんのこと、当科では妊婦健診中より特にリスクが無い方に対しても、へその緒の走行や付着部位の確認を可能な限り行い、妊娠中から分娩に至るまで臍帯トラブルが起こる可能性を評価しております(別項参照)。

 

こうしてハイリスク因子が確認された場合や、双胎分娩など予測困難な急変の可能性がある場合は、慎重な管理の下での計画分娩や、複数の医師が待機のもとでの分娩経過観察を行い、急変時に速やかに対応できるよう心がけております。

 

そうした努力もあり、当院で最も早く対応できた超緊急帝王切開では、方針決定から娩出までが8分間という記録があり、あかちゃんは脳の後遺症を免れました。もちろん、あかちゃんを助けるための超緊急帝王切開ですが、お母さんの安全を確保することが大前提であり、決して時間を競うものではありません。ですが、できるだけ早くあかちゃんをストレスから助けてあげる事で避けられる合併症もあるのです。これからも元気なあかちゃんの泣き声を聞くため、私たちは速やかにかつ安全にできる緊急帝王切開を目指して努力を重ねていきます。

 

妊娠糖尿病とは

妊娠糖尿病とは、妊娠前には正常の血糖であったにも関わらず、妊娠中に糖尿病となる病気です。もともと妊娠中には高血糖に傾きやすいので、その分インスリン分泌も増加してくるのですが、そのバランスがうまくいかないと妊娠糖尿病となります。母体の高血糖状態が続くと、胎盤を通して胎児へも影響が起こります。妊娠初期に重症の糖尿病であると、胎児奇形の原因となることもあります。また、中期~後期に血糖管理ができていないと、巨大児や羊水過多を引き起こし、分娩時に難産となることがあります。さらに出生後の新生児には低血糖が起こることもあり、注意が必要です。

 

<診断>

妊娠初期の随時血糖が高かったり、尿糖が持続する時、また胎児発育が過剰であったり羊水過多があるときは、妊娠糖尿病が隠れている可能性があります。そういう時には、精密検査である75g糖負荷試験を行います。これは75gのブドウ糖の入ったジュースを飲み、その前と1時間後、2時間後の血糖値を測る検査です。この検査で基準値を超えると、妊娠糖尿病と診断されます。

 

<治療>

 

まずは食事療法を行います。ほとんどの場合、食事療法を行えば改善します。それでも血糖コントロールが不良の場合は、インスリンの皮下注射を行います。血糖コントロールが良くなれば児のリスクを軽減できるため、血糖コントロールは重要です。出産後は正常に戻る場合が多いですが、中には本当の糖尿病が隠れている可能性もあります。
産後は妊娠中ほど厳密でなくてもかまいませんが、この機会に食事を見直していくと次回の妊娠の時にも安心です。

 

 

妊娠高血圧症候群とは

もともと血圧が高くないお母さんが、妊娠してから高血圧をきたす場合をいいます。自覚できる症状としては頭痛、疲労感、急激なむくみや体重増加、目のちかちか、吐き気、胃痛などが有名です。
放置して重症化するとけいれん、頭蓋内出血、呼吸不全をおこしたりする怖い病気です。また重症の場合は、胎盤の機能が低下し、胎児発育不全や常位胎盤早期剥離の原因になることもあります。

 

<診断>

血圧140/90以上または1日尿蛋白300mg以上(試験紙法では尿蛋白3+以上)の場合に診断されます。血圧160/110以上、1日尿蛋白2g以上となるようであれば、重症です。また、胃痛や吐き気として現れるHELLP症候群、けいれんや意識消失を起こす子癇発作、頭蓋内出血は妊娠高血圧症候群の最重症型であり、母体の生命も危険となります。

 

<治療>

 

根本治療は妊娠を終了させることです。しかし胎児救命が困難な早期に発症した場合や軽症の場合は、以下の治療で妊娠期間を延長させる場合もあります。
①安静:リラックスし、ストレスを軽減することも重要です。
②食事:適切な減塩、カロリー制限(1800Kcal程度)を行うことで、改善される場合もあります。ただし、むくみが気になるからといって水分制限を行うのは厳禁です。血管内脱水によりさらに病態が悪化します。
③薬物療法:①②で軽快しない場合、降圧薬やむくみをとる薬を使うこともあります。

 

基本的には産後、血圧や蛋白尿は改善しますが、重症となってからでは回復まで時間がかかります。また妊娠高血圧症候群は、重症となれば生命の危険がある病気であり、まずは健診で早期に発見することが重要です。

 

妊娠と薬外来、母乳と薬剤相談

『妊娠していると気づかずにお薬飲んじゃったけど、あかちゃんは大丈夫かしら?』、『持病のためお薬飲んでるんだけど、それだと妊娠は難しいのかな?』など、妊娠とお薬に関する悩みはとても多く聞かれます。当科は国立成育医療研究センターの妊娠と薬情報センターと連携し、関連施設として『妊娠と薬外来』を行っています。妊娠と薬情報センターではカナダのトロント大学と連携し、現在得られている最新の薬剤情報を元に、それぞれの方の妊娠週数や服薬状況における妊娠に関する影響を検討します。

 

現在インターネットなどで様々な情報が簡単に入手できる反面、情報の信頼性や自分の状況に当てはまるのかなど、情報の選択が非常に難しくなっています。薬剤の中には妊娠中に服用した場合、胎児に影響を及ぼすものがある事は事実です。しかし多くの薬剤は、妊娠中に服用しても時期や服用期間、服用量によっては胎児への影響を心配しなくてもいいものもあります。不正確な情報であかちゃんに対する不安が大きくなってしまい、自己判断で必要な薬剤を中止してしまうことは、時に非常に危険な状況となってしまうこともあるのです。

 
そんなときに利用していただきたいのが、妊娠と薬外来です。妊娠中の薬剤内服はもちろんのこと、現在薬剤を服用されていて今後に妊娠を考えられている方など、妊娠とお薬に関する相談であればどなたでもご利用可能です。それぞれの方の妊娠週数、薬剤の種類、投与量、病状などの情報を元にあかちゃんに対する影響に関する最新の情報を提供させていただきます。やはり妊娠中の薬剤使用は注意が必要なことも事実なので、必要以上に薬剤を使用することは避けるべきです。一方で薬剤の影響を心配しすぎて、お母さんの状態が悪くなることがかえってあかちゃんに影響を及ぼしてしまうこともあるのです。妊娠中の薬剤使用はお母さんとあかちゃんのために適切な薬剤を適切な量使用する必要があります。当科の妊娠と薬外来では薬剤師と産科医により、相談される方にわかりやすく納得していただけるように説明し、十分時間をかけお話ができるように心がけております。
せっかくのおめでたい妊娠が、お薬に対する不安でつらいものになってしまっては残念です。そんな事を避けるため、是非とも当科の『妊娠と薬外来』をご利用ください。

 

詳しくは当院へ直接お問い合わせいただくか、成育医療センター:妊娠と薬情報センターのホームページをご参照ください。

 
 

看護ケア

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切迫早産でも歩いて大丈夫!! マイナートラブル対策    出産準備パーティ      産前訪問
バースプランと夫立会い
 

びいあぱる

びいあぱるとはBe a Pal、友達になるという意味です。病院と友達になる?どういうこと?って思いますよね。障害を持ってしまったけれど、お家で両親といっしょにすごしている子どもはたくさんいます。この子どもたちはお父さんとお母さんが毎日一生懸命お世話をしています。この子たちの弟や妹が産まれるときには、お母さんは入院しなければなりません。入院中に障害を持つ子どもたちのお世話は誰にお願いすればいいのでしょうか。障害を持つ子どもはとても敏感です。いつもと違う人がお世話をしようとしても、日常とは異なった雰囲気に大きなストレスを感じてしまうかもしれません。こういう問題が解決できないために、次の出産を控えてしまうお母さん、お父さんが大勢いるのでしょう。

 

長良医療センターは周産期センターと障害者病棟が併設されている、国内でも数少ない病院です。出産のエキスパートも障害者のエキスパートもそろっているのです。そんな病院だからできる医療があります。障害を持つ子どもさんを自宅でみているお母さんが出産する際に、その子どもさんとお母さんを同じ病室に入院してもらうことができるようにしました。障害者病棟と産科病棟の医師や看護スタッフが協力して、障害を持つ子どもさんとお母さん、そして産まれてくるあかちゃんをしっかりと守るんです。そうして産まれてきたあかちゃんはお兄ちゃん、お姉ちゃんといっしょにすごすことができるんです。もちろんお父さんだって一緒に過ごしてもらえます。退院後の生活のちょっとしたシミュレーションにもなるでしょう。しかも入院の費用には公的な補助を受けることができるんです。

 

障害をもつ子どももお兄ちゃんやお姉ちゃんになれるんです。私たち長良医療センターが障害をもつお兄ちゃん、お姉ちゃんと、家族みんなと友達になって、弟や妹が産まれてくるお手伝いをする、それがびいあぱるケアなんです。お父さんやお母さん、家族みんなが安心して新しい家族を迎えることができるように、私たち長良医療センターの医師や看護スタッフ全員が協力して行うのがびいあぱるケアなんです。日本で他に例をみないこのケアを1人でも多くの皆さんにぜひ知っていただきたいと願っています。

 
母乳育児について NICUを退院する赤ちゃんとお母さんのために 電話訪問 地域との連携
新生児訪問 双子ちゃん
 

緩和ケアとは

 

あかちゃんの中には、いろいろな特徴を持ったあかちゃんがいます。様々な臓器が普通と違った構造を持つ場合、新生児期に特別な治療を必要とする場合もあります。しかし、その内容によっては、どんな治療を行っても生存が難しい場合もあります。胎児期の診断というのは100%と言えない部分もありますので、生まれる前にすべてを予測することはできません。しかし、細かい胎児診断によって判明してきた、いくつかの病態では、どのような治療を行っても生存が難しいあかちゃんがいるのも、また事実なのです。我々は、そのような現実にたいして目を背けるのではなく、そのようなあかちゃんたちの出産をどのようにしてあげたらよいのか、常に考えてきました。新生児集中治療室のスタッフとも連携し、そのあかちゃんにとって、どのレベルの医療行為が、必要で、どのレベルが過剰なのか。とても難しい問題ですが、ご両親ともども、追求していけたらと考えています。

 

残念ながら死産になるあかちゃんも、ひとつの命として大切に迎えてあげたいと考え、スタッフ一同で様々なケアを行っています。また、生後、明らかに余命が短い場合には、母児同室で過ごしていただいたりします。大切な時間を、家族として密度の濃い時間として過ごせるようなお手伝いをします。

 

ただ、そういう医療を行うかどうかは、きちっとした出生前診断と生後の観察によってのみ判断されますので、その判断は正確の上にもさらに正確でなければなりません。万事、手を尽くして、万が一そのような判断になった場合に、あかちゃんの苦痛を和らげてあげるケア、それが「緩和ケア」です。このようなケアを行うのも出生前診断、最先端の胎児治療を行い、生命のフロンテイアーのぎりぎりのところで診療を行わせていただいている当科の使命と考えています。ご夫婦によりそって、そのようなあかちゃんを迎えるお手伝いをさせていただいています。

 
病棟イベント ママ119(助産師外来)
 

産科病棟フォトギャラリー